選挙カーの上には、自民党都連会長の前衆院議員井上信治、地元の自民都議、八王子市長ら。車の前には自民市議たち。衆院選公示日の15日、JR八王子駅前で開かれた無所属前職の萩生田光一の出陣式は、党派閥の裏金事件を受けて党非公認になっても、多くの自民関係者がずらり並んだ。
「非公認でも安心して応援して」
「八王子の発展には萩生田さんが必要」
応援弁士らが口々にその実績を強調した萩生田は、経済産業相や党政調会長などを歴任。前回衆院選では次点に10万票差で圧勝するなど、地元の八王子市は「萩生田王国」と言われてきた。
衆院選公示日に候補者演説に耳を傾ける人たち=東京都八王子市で
だが今回は、自民の前議員で3番目に多い2728万円の政治資金収支報告書不記載があり、公示直前に非公認に。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)からボランティアの選挙支援を受けるなどの関係も判明し、二重の逆風となっている。
約500人を前にマイクを握った萩生田は不記載について「裏金をつくるとか、私的流用、脱税とかの事実は一切ない」と釈明。立憲民主党が「刺客」として擁立し、旧統一教会問題に詳しいジャーナリストの元参院議員有田芳生についてはこう訴えた。
「批判のためだけに八王子を選んだ野党候補がいいのか、この町に生まれ育ち、声を国政に届ける私がいいのか」
「裏金!」とヤジが飛ぶ場面もあったが、大勢の聴衆が拍手を送った。支援者の女性は「萩生田さんは派閥のルールに忠実に従っただけ。これまでもこれからも応援する」と熱っぽく語った。選挙カーやチラシには「比例は自民へ」と明記。秘書は「これまでの選挙と何ら変わったことはない」と強調する。
東京24区の選挙ポスター掲示板=東京都八王子市中町で
しかし、選挙区内に創価大を抱え、4万票以上とも言われる公明党の推薦は、前回から一転して見送られた。党関係者も、旧統一教会との接点や裏金問題を挙げ、「ポロポロといろんな話が出て、現場は推薦に抵抗がある」と説明する。
自民の地元支部幹部も「いつもなら『分かった』と投票してくれる人の中に『今回はダメだ』『(不記載の)2700万円はどうなったんだ』と断る人がいる」と厳しい状況を認める。
16、18両日の決起集会では報道関係者をシャットアウト。別の自民関係者は「支持者の一部が離れ、経済団体に『もっとやってくれ』と陣営は必死。今までにない緊迫感でピリピリムードだ」と明かす。
歩行者デッキの上から候補者の演説を聞く人々=東京都八王子市のJR八王子駅前で
一方、立民の有田は「裏金だけでなく、カルト教団にもべったりの政治を八王子から終わらせようではありませんか」と萩生田への攻勢を強める。
日本維新の会も新人の佐藤由美、国民民主も新人の浦川祐輔を擁立。さらに、参政党と無所属の計2人が立候補した。立民と国民の両党の候補がいるため連合が推薦を見送るなど、野党の競合で萩生田への批判票が分散しかねない構図にもなっている。
立民の野田佳彦代表が15日、有田の第一声の応援で「裏から支えてきた旧統一教会との結びつきも強い。裏金議員を裏で支える自民党政治に決別しよう」と訴えていると、聴衆からこんなヤジを浴びた。「野党をまとめろ!」(敬称略、長竹祐子、松島京太)
◆衆院東京24区東京のベッドタウン、八王子市の大半部分を占める選挙区。年間登山者数世界一の高尾山など自然に恵まれ、古くから養蚕や織物で栄えた多摩地方の都市。選挙人名簿登録者数は47万3665人(14日現在)。小選挙区制が導入された1996年以降、自民党は7勝2敗。公明党の支持母体、創価学会が関連する創価大学が市内にある。今回の衆院選から区割り変更で南大沢など市の南東部は21区に移った。
◆東京24区立候補者(届け出順)
与倉さゆり40 参政新
有田芳生72 立民新
畑尻文夫69 無所属新
浦川祐輔31 国民新
佐藤由美52 維新新
萩生田光一61 無所属前⑥
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