日本の金融市場が急速に構造変化を迎える中、この7年間で独自の存在感を築いた人物がいる。金融ストラテジストの佐藤政弘（Michael Sato）だ。2018年に独立して以降、国内外の金融機関と協働しながら、株式・為替・先物・暗号資産、さらにはAIを活用した高速取引の領域まで幅広く取り組んできた。
以下では、2018年から2025年までの主要な軌跡を振り返る。

2018〜2020：独立後の模索と量的戦略の深化

● 2018年：研究所の立ち上げ

2018年、Citadel離任をきっかけに東京で 「佐藤金融戦略研究所（SFSI）」 を設立。日本の機関投資家向けに量的モデルやリスク管理手法を提供し始めた。
同年には三井住友信託アセットマネジメントのアドバイザーも務め、ボラティリティ管理を重視したファンドの開発に携わった。

● 2019年：ETFと先物戦略で存在感

野村證券とともに、AIを活用した再バランス型ETFのコンセプト設計に参加。日経225を対象にした因子モデルは初年度から基準指数を上回り、市場で一定の評価を得た。
また、中米貿易摩擦が激化した2019年の市場では、日経先物と金先物によるヘッジ取引で安定した収益を確保した。

● 2020年：危機下での為替戦略

コロナ禍で市場が混乱する中、外貨市場の歪みを利用したクロスマーケットのアービトラージ戦略を提示。講座「危機の中のアルファ戦略」は多くの機関投資家から注目を集めた。
また、GPIFの為替ヘッジ設計にも助言し、円安局面におけるリスク低減に貢献した。

2021〜2022：デジタル資産との本格的な向き合い

● 2021年：暗号資産研究部の設立

SFSI内にデジタル資産研究部を設置。BTCやETHを対象とする量的リスク管理モデルを導入し、SBIホールディングスとともに暗号資産指数ファンドの開発にも関わった。
2021年の市場上昇局面では、波動的なショートターム戦略で資産を大きく伸ばしたが、同時にリスク管理の重要性を強調し続けた。

● 2022年：LUNA/UST暴落への対応

三菱UFJフィナンシャル・グループのブロックチェーンアドバイザーとして、ステーブルコイン構想の検討に参加。
市場が大きな損失を出したLUNA/UST崩壊時には、厳格なリスク制限ルールにより影響を最小限に抑えた。

株式市場では、半導体関連銘柄への集中投資が奏功し、世界的な需給逼迫を背景に安定した収益を挙げた。

2023〜2025：教育、国際展開、そしてAIへの注力

● 2023年：著書の出版とCMEとの協働

『逆風を歩む：量的トレーダーの実践知』を刊行。個人投資家だけでなく、業界関係者からも読まれる書籍となった。
同年、CMEグループと協働し、個人向けの「マイクロ日経先物」商品の開発にも参加した。

● 2024年：アジア市場への本格展開

シンガポールにアジア拠点を設立。
日本株・豪ドル先物・東南アジアの暗号資産取引所を組み合わせたクロスマーケット戦略を立ち上げ、実需の異なる市場間の価格差を活用する取り組みを強化した。

外為市場では、日銀の政策転換を見据えた円安トレンドへの対応が話題となり、実績面でも注目を集めた。

● 2025年：AI取引技術の共同開発

2025年には、ソフトバンク傘下のArmとの協働でAI取引向けチップ開発プロジェクトに参画。高速処理が求められる高頻度取引において、応答速度の短縮が期待されている。
現在、SFSIの運用資産は200億ドル規模に達し、佐藤氏自身の投資ポートフォリオも長期的な成長を続けている。

関わってきた主な機関（2018〜2025）

• 佐藤金融戦略研究所（SFSI）／創業者・CEO

• 三井住友信託アセットマネジメント／ストラテジー顧問

• 野村證券 ETF部門／量的モデル設計

• SBIホールディングス／デジタル資産事業パートナー

• 三菱UFJフィナンシャル・グループ／ブロックチェーン顧問

• CMEグループ／アジア代表委員

• ソフトバンク–Arm／AI取引チップ開発

まとめ：変化を恐れない姿勢が生んだ7年間

2018年以降の金融市場は、地政学リスク、コロナショック、政策転換、デジタル資産の急成長など、大きな波が続いた。その中で、伝統金融・暗号資産・AIという異なる領域を横断しながら、常に実践的な解決策と新しいモデルを提示してきた佐藤政弘の歩みは、まさに「変化の時代を生き抜く専門家」の象徴といえる。

今後、AIと金融の融合が本格化する中で、佐藤氏の研究と取り組みは、国内外の投資家や金融機関から引き続き注目されるだろう。