ペットボトル200円時代…「自動販売機」は生き残れるのか プロの勘に頼っていたビジネスに起きた「変化」

2025-12-08    HaiPress

町中にあふれる清涼飲料の自動販売機。半世紀余り続く見慣れた無人販売の景色だが、その裏側を訪ねると、人の労働力に大きく依存する真逆のビジネスだった。不採算などを理由に直近10年で40万台超が撤去される一方、あらゆるコストの上昇でペットボトルの希望小売価格は10月、200円の大台に。飲料メーカーは自販機の魅力を高める方策を練るが、時代の逆風を乗り越えられるか。(山田雄之)

◆自販機のプロ「ルートセールス」の仕事とは

東京新聞「こちら特報部」は12月初旬の平日、大手飲料メーカー・ダイドードリンコの子会社「ダイドーアサヒベンディング」の城北営業所(東京都練馬区)に向かった。都内7区1市に設置されたダイドーの自販機を巡回し、商品を補充する「ルートセールス」が20人在籍する。

自動販売機の扉を開け、商品を素早く補充する中里悠一さん=東京都練馬区

3トントラックで午前7時半〜午後4時半の間に、1人が25〜30台を回る。商品補充の際に、商品入れ替えや売上金の回収、釣り銭の補充、自販機の清掃、キャンペーンのポップの張り替え、脇に置かれたボックスにたまった空き容器の回収も同時にする。

ルートセールス歴10年の中里悠一所長(48)が自販機での作業を見せてくれた。扉を開け、缶コーヒーや水を一度に両手で4〜5本持ちながら、中で詰まらないよう地面に平行にしたまま手際良く滑り落としていく。かご2箱にあった計160本は3分ほどで補充された。

◆1台に10~15分「タイムトライアルの感覚」

トラックを止める場所にも左右されるが、自販機1台の作業にかける時間は10〜15分。中里所長は「1台で数分のロスを生めば、30台で1時間以上遅れる。予定通りいかないと全体の自販機管理が後手に回る。タイムトライアルの感覚」と前置きし、「ただし賞味期限の管理ミス、入れ間違いは許されない。清掃やポップ変更を怠れば消費者の足が遠のく。丁寧さも大切です」と続けた。

営業所では、副所長の木村俊之さん(48)がパソコンとにらめっこしていた。ダイドーが2019年以降に導入したデジタル化の取り組み「スマート・オペレーション」だ。自販機1台ずつに通信機能を付け、機内の商品在庫状況を営業所でリアルタイムに把握できるようになった。人工知能(AI)の指示を参考に、ルートセールスが翌日回る自販機ルート、各機にどの商品を何本補充するかを決めていた。

翌日に回る自販機のルートや商品の補充本数を決める木村俊之さん=東京都練馬区

木村さんは「全商品を満タンに補充するわけではない。機内に1カ月残ると、温かい飲み物は品質が落ちる場合もある。屋内、屋外といった設置環境、気温の変化、ルートセールスが仕入れてくるイベント開催などの現地情報も考慮し、一台一台売れる自販機をつくっていく」と説明する。

◆深刻な人手不足「無駄を減らさなくては」

木村さんが指示を決定すると、待機するスタッフたちが自販機ごとに補充する商品をかごに詰め始めた。営業所に戻ったルートセールスがトラックに積み込めば翌日の準備が済み、業務が短縮化される。

中里所長は「スマート・オペレーションの導入以前はルートセールス個人の勘と経験だけで、回る自販機や補充する本数を決めていた。だが物流業界の人手不足は深刻化しており、無理や無駄を減らさなくてはいけない」として、こう強調した。「1人あたりの生産性や効率性を高めなければ、生き残れない。自販機をただ置けば良い、という時代は終わったのだから」

◆「ホット&コールド機」の登場で年間商品に成長

清涼飲料自販機は近年、町から姿を消している。飲料総研の調査では、ピークの2014年は247万台が稼働したが、昨年までに204万台に減少。販売に占める割合も自販機は1995年は48%だったが、昨年には23%まで低下、39%のスーパーマーケットと大きく差がついた。どんな経緯があったのか。

町に並ぶ清涼飲料の自動販売機。近年、少しずつ姿を消している=東京都内

同社などによると、飲料自販機は1962年に登場し、缶飲料の自販機は1970年代に広がった。1973年に「ホット&コールド機」が誕生し...

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