政府が経済対策で打ち出した「重点支援地方交付金」の使途として自治体に推奨する「おこめ券」を巡り、本紙が首都圏28市区に聞いたところ、券の配布を明言した自治体はなかった。自治体からは、経費や事務負担のほか、政策効果への疑問の声も上がった。(白山泉、畑間香織、砂本紅年)

おこめ券
4、5の両日、東京23区と首都圏3県の県庁所在地、政令指定都市の担当者に電話などで聞き、5日時点の取材結果を集計した。コメなどの購入に充てられるおこめ券を、交付金を使い配布すると明言した自治体はゼロ。「国の補正予算案の成立が分からない状況で、申し上げることはできない」(練馬区)などとして、27自治体はおこめ券を配るかどうかを含めて「検討中」「未定」だった。江戸川区は配布しない方針だ。
事業に難色を示す自治体が理由に挙げるのが、配布の際にかかる事務負担や経費だ。世田谷区は「発送事務が増えることや、迅速に行うためのスケジュール管理が課題」などと答えた。
政策効果への疑問の声も上がった。「(おこめ券は)全国共通券なので他の自治体で使われてしまうのではないか」と都内のある自治体の担当者。券の発行団体が限られるため、川崎市は「利益誘導のような形にならないか」と懸念する。

おこめ券を配布しない江戸川区は、住民税非課税世帯への現金給付に交付金を使う方向で議会に諮っているという。担当者は「年収の壁の引き上げや減税など所得の高い方への恩恵はすでにある」と話した。
中野区は交付金の使途について「未定」としながらも、現金給付の方向で「検討中」とする。担当者は「(現金は)用途が限られないので、物価高対策として合理的だ」と説明した。
自治体の対応について、流通経済研究所の折笠俊輔氏は「値段が高くなっているのはコメだけではない。国からの交付金は、食品全般に使える地域振興券などに充てればいいのではないか」と指摘した。
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