〈法廷の雫〉
「主文、被告人を懲役3年に処する。5年間その刑の執行を猶予する」。11月17日、東京地裁立川支部の法廷で、判決を言い渡されている間、被告の女性(71)は正面を向いたままじっと聞き入っていた。
裁判で問われたのは昨年7月22日朝、東京都国立市の自宅で、102歳の実母の首を絞めるなどして殺害した殺人罪。母は同月内には介護施設に入居する予定だったのに命を奪ってしまった。
女性は長女で、2012年、母の求めに応じ両親の面倒を見るため実家に戻った。2021年に父が他界してからは2人暮らしになった。

東京地裁立川支部
事件の1週間ほど前から、母のトイレの回数が異常に増え、10分おきに声をかけられた。母はかたくなに、おむつに用を足そうとしなかった。女性はその度に母を抱きかかえ、ベッド脇のポータブルトイレまで運んだ。
当時の女性は157センチで49キロ、母は151センチの29.5キロ。重労働を繰り返すうちに腰を痛めた。ケアマネジャーに相談し、数日中に母が介護施設に入居することが決まった。事件前日のことだった。
事件当日午前4時ごろ、物音で目を覚ますと、自力でトイレに行こうとした母がベッドから落ちていた。腰痛で持ち上げることができなかったため、110番や119番で助けを求めた。救急隊員らは母をベッドに戻したが「今回は...
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