原告の小野春さんは違憲判決に顔を手で覆い、涙を流した「同性カップルの子育ても認めてくれた」 同性婚訴訟

2024-10-31    HaiPress

「性的指向による差別的な取り扱いで憲法違反」―。東京高裁は30日、同性婚を認めない民法などの規定を違憲と断じた。笑顔で法廷入りした原告の小野春さん=東京都世田谷区=は判決を聞き、一転、涙が止まらなかった。「いろんなことがあったが、裁判所がはっきり『違憲』と言ってくれ、報われた」(奥野斐)

同性婚を巡る東京第1次訴訟の控訴審判決を受け、東京高裁前で涙を流す小野春さん=30日、東京・霞が関で(布藤哲矢撮影)

◆提訴から5年8カ月、大人になった次男と法廷入り

パートナーでともに50代の西川麻実さんと同居して約20年。それぞれかつて男性と結婚し、出産した計3人の子どもを一緒に育ててきた。提訴から5年8カ月。大学生と高校生だった子どもたちは成人し、「判決どうなるんだろうね」と話してきた。西川さんは仕事で来られなかったが、次男と法廷入りした。

午前10時過ぎ開廷。谷口園恵裁判長が原告の方を見ながら判決を読み上げるのを、緊張した表情で聞き、現行規定を「憲法違反」と述べたところで、顔を手で覆い、涙を流した。さらに家事や子の養育など「実態において婚姻関係にある夫婦と変わらない」と触れると、再び涙があふれた。

同性婚を巡る東京第1次訴訟の控訴審判決を受け、東京高裁前で喜ぶ小野春さん(布藤哲矢撮影)

◆「同性カップルの元で育った子どものことも考えてくれて…」

閉廷後、次男に駆け寄り「子どものことも言ってくれたね」「良かった」と笑顔がはじけた。報道陣に「私たちのような同性カップルの元で育った子どものことも考えてくれていることが分かり、うれしい」と喜びの涙を浮かべた。

西川さんと同居を始めたころは偏見が今より根強く、親しい人を除いて2人の関係は友人や親戚と説明してきた。血縁関係もなく、配偶者としての法的関係もない西川さんに、小野さんの子どもの入院手続きはできなかった。

同性婚を巡る東京第1次訴訟の控訴審判決を受け記者会見する小野春さん(布藤哲矢撮影)

◆原告になったきっかけは自らのがん

2019年に提訴する3年前、小野さんは乳がんを患った。もし、子どもを残して死んでしまったら…。西川さんと自分だけでなく、自分の2人の子にも法的関係はない。この出来事をきっかけに同性婚訴訟の原告になる決断をした。

判決後の会見で小野さんは、訴訟で国が家族について「自然生殖」のある関係と繰り返したのが胸に引っかかっていたと明かした。「いろんな家族が既にいて、子育てしている同性カップルもいると、裁判所が言ってくれた」と喜んだ。

亡くなった元原告の佐藤郁夫さんの遺影を見つめ記者会見する小野春さん(布藤哲矢撮影)

◆判決を聞くことなく亡くなった知人、友人もいた

会見は、提訴後に病気で急逝した元原告の佐藤郁夫さん=享年(61)=の遺影を横に置いて臨んだ。ほかにも、同性婚を望みながら実現できずに亡くなった知人、友人がいた。佐藤さんの遺影に「一緒に判決を聞きたかった」と語りかけた後、声を詰まらせ、こう訴えた。

「一日も早く法律をつくってほしい」


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