27日投開票の衆院選で、東京11区は、自民派閥の裏金問題で党員資格停止1年の処分を受け、無所属での出馬となった元文部科学相の下村博文さん(70)が落選が確実となった。「政治とカネ」問題の逆風に押され、9期にわたり守り抜いてきた議席を失った。
午後8時、NHKが立民元職阿久津幸彦さん(68)の当選確実を伝えると、下村さんの板橋区内の事務所では20人ほどの支援者から「くそー」という声が漏れた。天を仰いだり、唇をかんだりしていた。
支持者に握手を求め、「すみませんでした」と頭を下げる下村博文さん=27日、東京都板橋区で(西川正志撮影)
20分後、下村さんが事務所に姿を見せると「申し訳ありませんでした」と深々と頭を下げた。支援者一人一人と握手をしながら「すみません」「申し訳ありません」とおわびを繰り返した。
「まさに政治と金の問題で、1年間の党員資格停止の中で、無所属で戦わざるを得なかった」とし、「信頼を取り戻すため、連日、朝から晩まで訴えたが、力が及ばなかった。不徳の致すところ」と語った。
報道陣に「このタイミングでの総選挙をどう受け止めているか」と問われると、「石破総理が決めたので、私がコメントする立場にありません」と述べた。
政治への信頼を失墜させた裏金問題に有権者の厳しい目が向けられる中、下村さんは街頭演説で自ら触れた。「丁寧な説明をし、信頼を回復したい」と訴え、ホームページで1円以上の支出まで記載した政治資金収支報告書を公開するなど透明性をアピールした。
公示前に自ら支援者宅を8000軒以上回るなどして、熱心な支援者の支持固めにも奔走。9期連続当選を支えた強固な組織も一枚岩となってフル回転した。それでも「裏金の本質は脱税」「汚い政治はまっぴらだ」と訴える立民の阿久津さんの勢いは止まらず、押し切られた。
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阿久津さんは午後8時過ぎにテレビで当選確実が報じられ、板橋区の事務所に現れると見守った支援者から大きな拍手が起こった。
当選を確実にし、支援者と握手する阿久津幸彦さん(右)=東京都板橋区で(増井のぞみ撮影)
阿久津さんは「小選挙区開始から初めて、ついにこの板橋、東京11区で自民党以外の政党の候補者が議席を取りました。本当に皆さんのおかげです。ありがとうございました」と声を張り上げた。
報道陣の取材に「物価高の話がかなり深刻。ここ板橋では、政治とカネの問題が一番大きなテーマだった。選挙中、自民党や下村さんへの厳しい批判があった」と説明。「敵失があったが、その受け皿として、東日本大震災の時の政府の現地対策本部の責任者としての経験がある私への安心感があったのではないか」と語った。(西川正志、増井のぞみ)
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