性風俗店として使われると知りながら居住用マンションの賃貸借契約を仲介したとして、警視庁保安課は18日、詐欺容疑で東京都新宿区の不動産仲介会社「エイトハウス」社長、直井延浩容疑者(36)=同区=を逮捕したと発表した。逮捕は17日付。
また直井容疑者と共謀したとして12日、同容疑でメンズエステ店「spa藤谷」経営の男(38)=墨田区=と、同店従業員の女(30)=同=を書類送検した。
逮捕容疑では、3月4日にエステ店経営の男から、違法な性風俗店舗用の物件を借りたいと頼まれ、都内の不動産管理会社が管理する中央区のマンション1室を不正に借りようと計画。従業員の女の住居と装った賃貸借契約の申込書を不動産管理会社に送り、同18日、同社を貸主、女を借り主とする契約を結び、賃借権を不正に取得したなどとされる。同課によると「弁護士と相談する」と認否を留保している。
警視庁保安課によると、詐欺被害に遭った不動産管理会社は、マンションのオーナーから物件を借り上げ、入居の有無にかかわらず毎月の賃料を保証する「サブリース(転貸)契約」を結んでいた。だがこの契約形態は、入居者をチェックできず、物件が違法に使われる懸念も指摘されている。
今回、物件のオーナーは貸し出す条件を「定職があり、住居として使う人」としていた。だが、性風俗店舗用の物件を求められた直井容疑者は、女が会社員だと偽装した証明書を準備。紹介手数料と合わせて男から約12万円を得ていた。同物件では7月末まで、約90回にわたり違法な性的サービスが提供されたという。
NPO法人日本住宅性能検査協会の服部順一理事は「サブリース契約上、特に取り決めがなければ管理会社がいくらで誰に貸したかなど、転貸先の情報をオーナーに伝えないことがほとんど。オーナーが管理を丸投げしている場合も多い」と指摘。「悪用されたり事故物件になると資産価値が下がるリスクが高く、細心の注意が必要だ」と警鐘を鳴らす。(小倉貞俊)
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