9月になったというのに暑い。朝晩、わずかに秋の気配を感じる日も出てきたが残暑が続く。
気象庁が8月22日に発表した9月から11月までの3カ月予報によると、9月と10月の気温は平年より高く全国的に厳しい残暑が続く見通しで、「十分な熱中症対策を」と呼び掛けている。
長引く暑さに、「暑さ疲れ」を懸念する声も聞かれる。聞き慣れない言葉だが、どういった症状で、どんな対策が必要なのだろうか。(由木直子)
気温「37.1度」を表示する温度計=2024年7月5日午後、熊谷市で
気象庁は9月2日、今年6~8月の東日本(関東や東海・北陸など)の平均気温は平年を1.7度上回り、1946年の統計開始以降で昨年夏と並び最も高かったと発表した。
総務省消防庁によると、熱中症により救急搬送された人は9月1日までに8万5475人(速報値)。前年同期より2749人多い。
どんどん暑くなる「夏」は、同時に、長期化する傾向がある。
気象庁によると、東京で最高気温が35℃以上となった猛暑日は、2018~2023年の5年間で計64日だった。2013~2018年の計33日から2倍近く増えており、今後も長期的には増え続けるとみられている。
同じく、夜間の最低気温が25℃以上となる熱帯夜も33日増えた。
厳しい暑さの中汗をぬぐいながら横断歩道を歩く人たち=7月29日午後、千代田区で
長引く暑さは、私たちの身体に影響する。
「以前なら暑さが和らいで体力が回復していく時期のはずが、今は暑さが続いて『暑さ疲れ』になる」
名古屋で20日連続の猛暑日を記録し、「逃げ水」が現れた道路を歩く人たち=2024年8月13日午後、名古屋市中区で
熱中症対策に詳しい済生会横浜市東部病院の谷口英喜医師(58)は、そう指摘する。
胃腸の消化液は37度が一番よく働くとされ、暑さで高体温が続くと機能が低下し胃腸の不調につながる。
筋肉も、体温が高いと筋肉はずっと熱を持ったままになってしまい、疲れがたまってだるさを感じる。
暑さで水分補給が損なわれれば、体温の上昇を助長する。
こうして食欲不振やだるさを感じるなど体調不良に陥るのが「夏バテ」。8月下旬になれば暑さが和らいで回復するはずが、終わらない猛暑で症状が続き、疲労が蓄積してけん怠感が強まる「暑さ疲れ」になる。
暑さ疲れについて話す済生会横浜市東部病院の谷口英喜医師
谷口医師は、「暑さによる負の連鎖だ」と語った。
では、どのようなことに気を付けたらいいのだろうか。
谷口医師は、栄養補給と休養という「基本」の大切さを説く。
野菜を含めたバランスの良い食事を心がけるのはもちろんだが、特に、ミネラルとビタミンを補給するためトマトやナス、カボチャといった夏野菜や、疲労回復に効くタウリンが豊富なイカ、タコ、カキなど魚介類も効果的。「これからの時期はサンマもオススメ」
鮮やかな赤色のトマト。彩りやバランスのよい食事を心がける
休養のためには入浴を見直し、「全身の血流を巡らせましょう」。暑いからとシャワーで簡単に済ませず、ゆっくり湯船につかり体をリラックスさせると、自律神経が活発になり疲労がほぐれるという。
外出時の暑さ対策グッズも、使うだけで体温が下げるのは難しいが、「不快感を取り除くために補助的に使うのはありかなと思います」。
暑さ対策グッズといっても、たくさんの商品が出回る昨今。今年は、どのような製品が売れているのだろうか。
傘の中棒に付けられる携帯扇風機=東京都渋谷区のハンズ新宿店で
生活雑貨を扱うハンズ新宿店に聞いてみると、人気なのは日傘の中棒に取り付けられる携帯扇風機。日陰をつくって、同時に風も受けられる。
その日傘だが、遮光に加え、熱も通さない「遮熱」を売りにした傘が多くなった。
最近は男性の購入者が増えており、広報担当者は「2、3年前から若い男性が使い始め、今はどの年代の方も売り場で見かける」と話す。
入浴グッズでは、メントール配合のさっぱりとした清涼感がある入浴剤が好調で、売り切れ商品も多いという。
長引く暑さから、対策グッズの売り場は9月も残すという。10月末のハロウィンに向けた商品が並び始める時期でもあり、広報担当者は「このままだと暑さ対策グッズとハロウィングッズが同時に並ぶかも」と苦笑いしていた。
季節のフロアに並ぶ暑さ対策グッズ=8月22日、東京都渋谷区のハンズ新宿店で
メントールを配合した夏にぴったりの入浴剤=東京都渋谷区のハンズ新宿店で
男性に人気の日傘コーナー。落ち着いた色味や大きめのサイズが豊富=東京都渋谷区のハンズ新宿店で
今年人気の880mL入る大容量タンブラー=東京都渋谷区のハンズ新宿店で
「ネッククーラー」は28℃で固まるものがこれからの行楽シーズンに長く活躍しそう=東京都渋谷区のハンズ新宿店で
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