<夏の甲子園>早実、耐えて勝利つかむ あす大社と対戦

2024-08-16    HaiPress

鶴岡東に勝ちスタンドの応援団席へ駆け出す早実ナイン=いずれも甲子園球場で

甲子園球場(兵庫県西宮市)で開かれている全国高校野球選手権大会は15日、2回戦の4試合を行い、早実(西東京)は延長タイブレークの末に鶴岡東(山形)に1-0でサヨナラ勝ちし、3回戦に進出した。悪天候などによる順延がなければ、17日の第4試合で準々決勝進出をかけて大社(島根)と対戦する。

打撃戦だった鳴門渦潮(徳島)との初戦から一転、この日は最後まで目が離せない投手戦となった。

早実先発の中村心大投手(2年)は、五回まで相手打線を無安打に封じる上々の立ち上がり。七回表は1死一、二塁、九回表は2死一、二塁のピンチをそれぞれ切り抜け、延長タイブレークの十回表は味方の堅守もあって無失点に抑えた。

一方の打線は、制球の良い鶴岡東の桜井椿稀投手に対し、六回までわずか2安打と攻めあぐねた。0-0で迎えた七回裏は先頭の高崎亘弘選手(3年)が二塁打を放つなど、1死二、三塁の好機をつくったが、スクイズ失敗などもあって先制点を奪えなかった。

試合を決めたのは、0-0のまま迎えた延長タイブレークの十回裏。先頭の国光翔選手(2年)の犠打などで1死満塁とし、打席には10回を投げ抜いた中村投手。初球の変化球を振り抜き、右翼手の頭を越すサヨナラ打を放った。

◆監督・選手談話

和泉実監督こんな展開は一度もなかった。びっくりしている。この経験が、選手を強くしてくれると思う。

宇野真仁朗主将タイブレークの練習はしたことがあった。最後まで集中していた。

山中晴翔捕手(中村について)真っすぐがよかった。

◆緊迫の投手戦、自ら殊勲打早実(2年)中村心大投手

タイブレークの10回裏早実1死満塁、右越えに決勝打を放つ中村投手

投げては144球の奮闘で10回を無失点に抑え、打っては緊迫の投手戦に終止符を打つサヨナラ打。まさに独壇場の活躍をみせた中村投手だが、より確かな手応えを感じたのは投球の方だろう。打線に助けてもらった印象も強かった地方大会と今大会初戦から一転、この日はまぎれもなくエースの力投だった。

調子が悪い時は高く抜けて明らかなボールになる直球も、変化球の制球が良かったこの日はむしろ武器だった。緩い球を低めに集めて打者の目線を下げ、高めに強い直球を投げ込んで空振りを奪う。「しっかりコーナーを突いていけた」と振り返ったように、高低を広く使って相手打線に的を絞らせなかった。

象徴的だったのが七回表1死一、二塁の場面。それまでの対戦で低めの変化球を見せていた5番打者に対し、外角高めの直球で空振り三振を奪った。

先発し、相手打線を完封した中村投手

西東京大会では5試合を投げて22失点。今大会初戦も7回4失点と粘りはしたが、決して納得の投球ではなかった。スリークオーター気味の腕の振りが、「体の回転に追いついていない」と感じ、初戦からの短期間で腕の振りを修正したのが奏功したという。

自らのバットで試合を決めた十回裏。直前の投球で左太もも裏をつり、治療を受けて何とか打席に立ったが、積極的な初球狙いで殊勲打を放った。「今日は自分だけの時間をつくりだせた」。投げて打って文句なしの仕事を果たし、次戦への手応えを深めている。(佐藤航)


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